2023/02/19 20:51


新譜CDのリリース情報です。

アンビエントミュージック : 比較的静かな音響の微細な変化を表現の基調とし、ある特定の場所や空間に雰囲気を添えることを指向した音楽。

たしか数十年前の雑誌『ブルータス』だったと思う、アンビエントミュージックの特集が組まれていて興味を持った。そこには美術館やファッションショーなどにも使用され、その音楽じたいをメインとせず、その空間に添える音楽であることが説明されていた。コンピュータのWindows'95の起動音も作曲された曲であることを知り更に驚いた。実際に、そこに紹介されていたCDも何枚か買って聴いてみて凄くユニークだと思った。

それから月日は流れ2010年頃、初めて西村さんの演奏を聴いたのは篠栗町の喫茶 陶花さんだったと思う。ギターを中心に演奏したフレーズをその場で録音してリピート再生しながら何重にも音を重ね即興で、その空間の音楽を作りあげていく、そんな独特なパフォーマンスに、福岡でもこんなスタイルでやってる人がいるんだなぁと、そのスタイルがアンビエント音楽のアプローチだったので深く感銘を受けた。

初めて、声をかけたのは冷泉荘でのライブだったと思う。それから僕が主催したイベントに出演してもらったり新譜がリリースされれば買い求めた。特に『TWELVE LETTERS』というアルバムを凄く気にいり実際に店舗でも1年以上BGMとして使わせていただきCDも販売させてもらっている。余談ではあるが80代になる私の父も、このアルバムを絶賛していた。

その後、長崎・壱岐島で暮らす人々の記憶を元に紡がれた、松嶋圭さんの著書『陽光』の出版記念巡回展の展覧会の音楽として制作された「Luminescence」は、音楽の中に、実際に壱岐島の波の音や風の音、鳥や虫たちの声を録音したものを使用していて、新たなアプローチの作品となった。

また同様に直方市のカフェ「Bouton(ボタン)」が、店舗の一部を改造し、バスの待合所を設けるクラウドファンディングの返礼品として制作された「リヴィエール」もバスや鉄道、遠賀川の音の他に、風のそよぎ、セミの鳴き声、公園の噴水、商店街のざわめき、直方の日常にある音を録音して作品の中に盛り込んだ。

その「リヴィエール」をリリースした直後だと思う。ふらっと遊びに来てくれた西村さんに上記の2作品のような篠栗町の音を録音した作品を作ってくださいとお願いしたのが、そもそもの始まりで2019年頃だった。

それから約3年、篠栗の霊場文化の分かる映像を観ていただいたり、西村さんと私で篠栗町の名所を巡ったり、西村さん自身も何度も篠栗に通って四季折々の様々な音を収集してくださって完成したのが本作品だ。当初は1枚で販売する予定だったが、西村さんの意向で2部作となり、今回のアルバムは春と夏に録音した音から構成されている。初めて西村さんよりタイトルを聞かされた時、ちょっとドキッとした『trancience』の意味は移ろい、儚さ、無常、このタイトルは、日頃から私が篠栗町に抱くイメージそのものだったからで、これ以上のタイトルはないなと感じた。


私がCDのジャケットにも投稿しているが、空海が修行したと伝わる霊山 若杉山を臨む篠栗町。古よりスピリチュアルな精神世界と緑ゆたかな自然を育み独特な雰囲気を醸す地である。その地の様々な音をフィールドレコーディングし音楽家 SHUHEI NISHIMURAがコンダクトしたアンビエント(環境)音楽が篠栗へ誘う。


2月4日より弊社店頭およびオンラインストアにて販売いたします。価格は2500円(税込)です。